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こんなトラブルの時は?

 

オーストラリアの社会福祉制度 (1)

ラトローブ大学ソーシャルワークコース
HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

 皆さん普段生活されていて「社会福祉制度」と言われてもピンと来ない方が多 いの ではないでしょうか。そこで今回は具体的にどのようなサービスが、どこに行けば受 けられるのかを簡単に紹介してみたいと思います。
  オーストラリアには様々な社会福祉サービスを提供している政府機関、非政府機 関 があります。たとえば各種年金・給付金などはDepartment of Social Security (DSS) という連邦政府の官庁が担当していますし、精神的な問題については Community Mental Health Centreという半政府系の機関が設置されています。また家 庭内暴力や性的犯罪の被害者に対する援助の分野ではWomen's Shelterや Centre Against Sexual Assault (CASA)といった団体が活動しています。これらの各種サー ビスの内容や連絡先については「イエロー・ページ」のはじめのところにまとめて 載っていますので、これを見てご自分でそこに電話されるのもひとつの方法です。
 しかし、実際に様々な団体によって数多く提供されているサービスの中から自 分が 直面している問題に最適なものを見つけだすとなると、これはなかなかたいへんな問 題です。そのうえオーストラリアで生まれていない方の場合は、言葉、ビザ・ステー タスなどといったことも考える必要がでてきます。そこで現在ではオーストラリア以 外で生まれ、この国に移住あるいは滞在している人を専門に、社会福祉サービスの提 供を行うMigrant Resource Centre (MRC)という機関が設置されています。
 MRCはオーストラリア全土にあり、メルボルンの場合はすべての地域をカバーする ように複数のMRCが置かれています。ですから、皆さんの住んでいらっしゃる地域の MRCに行けばそこにいるソーシャル・ワーカーが相談にのってくれます。また、問題 によって他の専門機関に行ったほうが効果的な場合は、適切な機関への紹介をしてく れます。
 このMRCのサービスは他の社会福祉団体と同じ様に無料で提供され、もちろん相談 内容は秘匿されますし、ワーカーはソーシャル・ワーク等の学位を持った専門家で す。問題を抱えているがどのように解決すればよいのか判らない、あるいはどこに相 談すればよいのか判らないという場合、まずMRCに連絡してみれば解決に通じる具体 的な助言を得られることは多いと思います。
 実際の相談方法としては、ご自宅の近くにあるMRCに電話をしてソーシャル・ワー カーへ会うための予約を取り直接会いに行くか、あるいは簡単な問題であれば電話で 相談をすることになります。残念ながらいまのところ日本語を話すソーシャル・ワー カーはいませんが、通訳が必要な場合はMRCが無料で通訳の手配をしてくれます。ま たSt. KildaにあるSouth Central Region MRCでは筆者が毎週金曜日にボランティア ・ワーカーとして日本語によるサービスを行っています。South Central Region MRC の連絡先は9525-4622、その他の地域のMRCの連絡先は「イエロー・ペー ジ」を参照してください。

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オーストラリアの社会福祉制度 (2)

ラトローブ大学ソーシャルワークコース
HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

  前回のニュース・レターではオーストラリアでの一般的な社会福祉機関、と くに Migrant Resource Centreについて簡単に紹介しましたが、それでは実際にこれらの 機関はどのようにして利用すればよいのでしょうか?今回はサービスの利用のしか た、とくに最初のコンタクトについて書いてみたいと思います。なお、詳細について はそれぞれの機関によって多少の差異があることはあらかじめお断りしておきます。  言うまでもないことですが、利用の第一歩はサービスを受けたい、あるいはサービ スを提供してくれるのではと思われる機関に電話をかけることからはじまります。最 初に電話をかけてみて、そこで実際に自分が出向いて行く必要があるのかどうかを確 認するわけです。用件が電話のみで終わればそれはそれで時間の節約になりますし、 もし事務所に来て欲しいということであればここで改めて予約を取ることになりま す。また、仮にそこが自分の必要としているサービスを提供していない場合でも、電 話の相手が心当たりの他のサービスを紹介してくれる可能性もありますから、話は大 いに活用されることをお薦めします。
 ところで、電話をすると多くの場合受付がまず電話に出ます。「そこで誰を呼び出 すべきなのか?」個人的な話になりますが、ぼくは昔よくこれで失敗しました。自分 の話したいことを受付の人に話しだしてしまい、担当者に繋いでもらうまでにやたら と時間がかかり、さらに担当者が電話に出るとその人にまた同じ話を最初から繰り返 したりしたのです。これはその事務所に何を担当する誰がいるのか全然見当がつか ず、具体的な担当部署もそこにいるワーカーの名前も告げることができなかったから なのですが、こういう場合は「duty worker」あるいは「social worker」と話たいと いえば、まず大丈夫です。多くの事務所では当番制で電話に応対をするワーカーを決 めています。
  さて、電話に担当ワーカーがでました。ここから本来のサービスがはじまるわけ で すが、ここでポイントをひとつ。電話をかける前に相談したい内容を何かに書き留め ておき、そのメモをもとに話をすれば事実関係の確認がしやすくなります。いつ、ど こで、何が、どのように起こったのか?電話ではほとんどの場合、ワーカーはあなた から説明される話のみをもとにして対応するわけですから、これらの基本的な事実を はっきりと間違いなく伝えることは不可欠なこととなります。これは判りきったこと のようですが、実際にクライアントからの電話を受けているとその辺りがはっきりし ないために話が前に進まないということがままありますので、ここにあえて記してお きます。
 あなたが電話あるいは面接して話した内容はワーカーのファイルに記録され、以後 のあなたの面接相談のために利用されますが、この情報は倫理的、法律的に求められ る場合を除いて第三者に明かされることはありません。あなたがワーカーに伝えた情 報は相談のためだけに限定して利用されます。オーストラリアではソーシャル・ワー カーに対しても「職務上知り得た情報の秘守義務」はたいへん厳しく求められてお り、その厳しさは弁護士、医療関係者などへのそれとなんら変るところはありませ ん。もし、仮にあなたの情報が正当な根拠もなく第三者に漏れた場合は、ソーシャル ・ワーカーの団体であるAustralian Association of Social Workers (AASW)に審判 を申し立てることが出来ますし、またその他の法的手段に訴えることも可能です。

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オーストラリアの社会福祉制度 (3)

ラトローブ大学ソーシャルワークコース
HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

   現在日本では高齢化社会とそれに関連するさまざまな問題が取り沙汰さ れ、この話 題がメディアを賑わせています。ここオーストラリアでも高齢化社会の問題、とくに 今後の老人福祉の在り方については大きな関心をよんでいます。つい先日も老人ホー ム入居者に対する保証金制度の導入の話題が新聞に大きく取り上げられたことをご記 憶の方も多いのではないでしょうか?そこで本稿では今回と次回の二回にわたって老 人福祉制度について書いてみたいと思います。
 オーストラリアの老人福祉制度を考える場合、日本との大きな違いはその介護のや り方と施設にあらわれています。日本ではある程度年を取って身体に障害が出てきた り、ひとりの生活が難しくなってきたりすると老人ホームに入るという選択が割と一 般的です。家族がその老人の介護をする場合ももちろんありますが、老人ホームへ入 居することも同じ様によくあるわけです。一方、ここでは出来るだけ老人を地域社会 の中で介護しようという動きがあり、このため老人ホーム(nursing home)に暮らす老 人の数は日本に比べるとかなり少ないといえます。オーストラリアでは老人とは65 歳以上の人を指しますが、ビクトリア州の全老人人口のうち老人ホームで介護を受け ているのは約1%だといわれています。これは日本で老人ホームに入っている人の率 に比べるとかなり低いといえます。というのは、こちらで老人ホームでの介護を受け られるのは、老人性痴呆、脳梗塞、心臓発作などによって心身に重度の障害を持ち、 食事、身の回りの世話など全てにわたって介護が必要なひとに限られているからで す。つまり残る99%の老人は仮に障害があっても老人ホームには入らず、何・u桙 轤ゥのかたちで介護を受けつつ地域社会の中で暮らしていることになります。
 それでは老人ホーム以外での介護にはどのようなものがあるのでしょうか?まず自 宅で暮らす老人には食事の宅配サービス(Meals on Wheels)があります。これは地方 自治体によってサービスされており、食事を自宅まで配達してくれます。またこれと 似たものに、自宅へのケア・ワーカー(日本でいうヘルパー)の派遣があります。派 遣されたケア・ワーカーがその老人の障害の度合に応じて、買い物、掃除、入浴の介 助といった身の回りの世話をするものです。これら自宅に住む老人へのサービスは日 本でいう在宅介護の支援サービスに似ているといえますが、大きな違いはこちらでは そのサービスを受ける老人の多くが独居であるか、あるいは配偶者との二人暮らしで あるという点です。これは家族観の違いとしてたいへんよく知られていることです が、日本に比べるとオーストラリアでは結婚後の両親との同居があまり一般的ではな く、このため介護の内容も老人を介護する家族を支援するものよりも、独居の老人自 身を対象としたものが多いようです。
 そして、これら自宅に住む老人への介護サービスとは別に、ケア付き住宅がありま す。これはいわば自宅で生活するのと老人ホームに入るというふたつの選択肢の中間 に位置するもので、老人向けに作られた施設に入居しながらも個人の独立した生活を できるだけ保つことを目指して設置されています。施設によって違いはありますが、 そこでは各人が個室を持ち、介助が必要なことについてはそこにいるケア・ワーカー がそれを行うという形が一般的です。どの程度の介助を受けるかはそのひと個人の必 要性によって変ってくることになります。そして、その介護の多様性に応じて施設に も様々なものがあります。
 それではこれらの施設に入りたい、あるいはサービスを受けたいという場合にはど のようにすればよいのでしょうか?次回はサービス利用の実際とその費用負担につい て書いてみたいと思います。

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オーストラリアの社会福祉制度 (4)

ラトローブ大学ソーシャルワークコース
HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

 老人福祉の第2回目は、実際に施設に入りたい、あるいはサービスを受けたいという場合のサービス利用について書いてみたいと思います。

 まず地域のコミュニティーのなかで、今現在の家に住み続けながら各種のサービスを受けるときですが、これはお住まいになっている地域のシティ・カウンシルに問い合わせの電話を掛ければ詳しいサービスの内容、その利用の仕方を教えて貰うことができます。ホワイト・ページに載っている各カウンシルのメイン・スイッチボードに電話して、”Community Careについて聞きたい”と言えば担当の部署に繋いでくれます。またカウンシルが発行している情報誌にも問い合わせの電話番号は掲載されているはずです。シティ・カウンシルによって提供されているサービスには、食事の宅配(Meals on wheels)、掃除・買い物といった家事の補助、コミュニティー・バスなどがあり、具体的なサービス内容はカウンシルごとに異なっています。

 またケア付き住宅であるホステル、老人ホーム(Nursing Home)を利用したい場合は地域毎に設置されているAged Care Assessment Team(ACAT)に連絡することになります。ACATはケアが必要だと思われる人のケアの必要性や障害の度合などを査定する機関で、ソーシャル・ワーカーがケアを希望する本人及びその家族の状況などを調査して、そのひとに一番適当だと考えられるケアの種類を決定します。これらACATの連絡先については各シティ・カウンシルに問い合わせることも出来ますし、Commonwealth Department of Health and Family Services が設置している”Aged Care Hotline”(電話番号 1800500853)に電話して情報を得ることもできます。もし老人福祉とそれに伴う費用負担の問題を特にお知りになりたい場合は、同じデパートメントが開設している”Goverment's Free Financial Information service”(電話番号 131021)にお電話下さい。

  この記事の内容についてお問い合わせがある場合はFAXあるいは郵便にて、ホープコネクションまでご連絡ください。

*前回の記事の中で老人ホームでケアを受ける人の率は全65歳以上人口のうち1%であると書きましたが、 最新の政府発表によればこれは全70歳以上人口のうちの7.5%の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

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オーストラリアの社会福祉制度 (5)

HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

  ホープ・コネクションが行っている電話相談にかかってくる相談の内容を見て いる と、借家に関連した相談が案外多いようです。また、私個人のまわりでも家やフラッ トの賃貸借をめぐるトラブルの話はよく耳にします。そこで今回は「家屋の賃貸借を めぐるトラブルへの対処法」について書いてみます。
ひとくちに賃貸借契約をめぐるトラブルと言ってもさまざまな問題が考えられま す。たとえば「破損した施設を家主が修繕しない」「自分のミスではなく家屋の施設 の一部が破損したのに修理代金を請求された」「家屋に損傷があった訳でもないのに 保証金(ボンド)が戻ってこない」「過去半年のあいだに2回以上家賃の値上げが あった」などなどがよくあるケースですが、まずいずれの場合にも不動産屋あるいは 家主と直接話をしてみることをおすすめします。これは言うまでもないことのような 気もしますが、こうしたトラブルの場合に当事者と直接話をしないで第三者に相談さ れる方が意外に多いのでここに改めて書いておきます。
さて、相手方と話してみたけれども埒があかない、あるいは相手方と話をする前に 自分の権利を知っておきたいといった場合にはどうすればよいのでしょうか?メルボ ルンには家屋の賃貸借契約をめぐるトラブル専門に相談業務を行っている組織があり ます。一般的に"Tenants Union" (テナント・ユニオン)と呼ばれるものがそれで、 地域毎に事務所が設置されています。このユニオンは正式には"Metropolitan Tenants Advice Services"と呼ばれ、州政府が運営資金を提供して借家人に対する各 種アドバイスの提供を行っており、ここで働くワーカー達は賃貸借契約に関する専門 知識を持っています。事務所は各地にあるため、すべての連絡先をここに挙げること はできませんが、1ヶ所代表的なユニオンの電話番号を書いておきます。
Tenants Union of Victoria  Phone: (03) 9416 2577

なお、こういったユニオンに相談される場合には、賃貸契約とその推移を証明する すべての文書(賃貸契約書、過去の請求書・領収書、家主あるいは不動産屋からの手 紙、ご自分が出された手紙など)を用意されてから連絡されると相談がスムーズに進 みます。また、これに関連してですが、家の賃貸借に伴う書類はたとえそれがどんな に細かいものであったとしても、その契約が終了するまでは保管されることをおすす めしま す。そして相手方から何等かの同意を得た場合、金銭のやり取りがあった場合などは すべて文章化されるのが安全です。

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日本の社会福祉制度 (1)

HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

  前回までこの欄でオーストラリアの社会福祉制度について書いてきました が、今回 から「日本の社会福祉制度」と題して日本における福祉制度の現状を紹介していきま す。第一回目は昨年できた介護保険制度についての解説です。
 1997年12月に臨時国会で介護保険法案が成立しました。「介護保険」につい ては日本ではここ数年メディアでも頻繁に取り上げられており、みなさんその名前と 大まかな内容はご存じではないでしょうか。
 介護保険は40歳以上の方を被保険者としており、毎月一定額の保険料を支払うこ とにより、被保険者が「加齢に伴い」介護が必要となった時に介護サービスの提供を 受けることが出来るというものです。ここで主なポイントとなるのは以下の二点だと 考えられます。まず第一は、保険給付の対象となるのは加齢、つまり年をとったこと により生じた「要介護状態」であり、それ以外の障害・疾病の介護については対象外 であること。そして第二は保険の給付は在宅および施設でのサービスの提供というか たちで行われ、現金が支払われるわけではないということです。
 ここでいう「要介護状態」とは「入浴、排泄、食事などの日常生活動作について介 護を必要とする状態」であると定義され、その度合によって6段階に分類されます。 この要介護状態の認定は、各市町村によって行われ、被保険者が必要とする介護の度 合に応じて、在宅または施設での介護サービスに対する保険の支給額が決定されると されています。
 具体的なサービス内容としては、在宅の場合は介護・家事の援助をするホーム・ヘ ルパーの派遣、訪問入浴、訪問介護、訪問あるいは通所によるリハビリ、かかりつけ 医による医学的管理、老人介護施設でのデイ・サービス(昼間のあいだ施設に通って 介護を受けたり・レクリエーションなどに参加すること)、介護施設への短期の入所 などが挙げられます。また施設の場合は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養 型医療施設といった施設への入所となっています。
 気になる保険料ですが、所得額に応じて五段階に分かれるとされており、先日厚生 省が発表した試算によると、制度の開始時には40歳以上のサラリーマンの夫婦で月 額で1700円程度、65歳以上の夫婦で月額5000円程度の負担になるとされて います。(これは制度の開始時における保険料であって、運用開始後には保険料は 徐々に引き上げられていきます。)なお、40歳から64歳までの方の場合、保険料 は医療保険料と併せて支払うことになり、65歳以上の方の場合は原則として年金・ 保険からの天引きとなります。64歳以下の方は保険料自体が若干安く設定されてい るのと、加入されている健康保険の種類によって事業者あるいは国庫が保険料の半分 を負担するため、65歳以上の方に比べると保険料の負担は低くなっています。そし て介護サー ビスを受ける際には、利用者負担としてサービス提供にかかる費用の一割を支払うこ とになります。
 政府はこの介護保険制度を2000年4月からスタートさせると発表しています。 それでは、実際にこの制度が始まった場合にはどのようにすれば介護サービスを利用 出来るのでしょうか?そして、海外に住んでいらっしゃる方が日本に帰国された場合 にはこの保険をどのようなかたちで利用できるのでしょうか?次回はこれらの点につ いて書いてみたいと思います。
 なお、介護保険制度は現在具体的なシステムの検討段階にあり、ここに書いた内容 はあくまでもこの原稿執筆時での情報をもとにしていることを書き添えておきます。

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日本の社会福祉制度 介護保険(2)

HOPE CONNECTION 顧問 ソーシャルワーカー 水藤 昌彦

 今回は介護保険制度についての2回目です。前回書いた保険制度の大まかな枠 組みをもとに、実際に保険を利用するにはどうしたらよいのか、また保険給付の過程 などについて述べていきます。
 介護保険制度が実施されると、被保険者の居住する各市町村が「加齢に伴い」介護 が必要となったと認定したときに、在宅または施設での介護サービスが受けられるよ うになります。
 この介護が必要な状態についてより詳しく書くと、「要支援状態」と呼ばれる「虚 弱な状態であって、要介護状態とならないために適切な介護サービスを受けることが 必要な状態」と、要介護状態の2つに分類されます。そして要介護状態は介護を必要 とする度合に応じてさらに5段階に分かれています。つまり要支援・要介護を合わせ ると、何らかのかたちで介護サービスの給付を受ける状態は6つに分けられることに なります。
 各被保険者が要支援あるいは要介護状態にあると思われるときは、まず居住してい る市町村に「認定申請」を行います。申請があると「介護認定調査員」による面接が 各被保険者に対して行われ、この面接の記録に「かかりつけ医の意見書」、「調査員 が記す特記事項」などを添えたものが各市町村の「介護認定審査会」に送られます。 「ケア・サービス調査票」と呼ばれるこの面接記録には、現在のところマーク・シー ト形式が採用されることになっており、したがって認定審査会は第一次審査をコン ピューターによって行うことになりそうです。認定審査会は全国共通の認定基準に基 づいて、それぞれのケースについて要介護状態にあるかどうか、もしあるのならばそ れが前述の6段階のうちのどれにあたるのかを判定します。ここで要介護状態にある と判定されれば、それぞれの段階に応じて各種介護サービスの給付が始まり、要介護 状態にはないとされた時は給付は受けられません。なお、認定審査会の判定結果に不 服があるときには、各都道府県が設置する「介護保険審査会」に不服申立ができま す。
 厚生省の試算によれば、65歳以上の被保険者のうち約13%、80~84歳のう ち約25%、そして85歳以上のうちの約50%が何らかの介護サービス給付をうけ るとされています。
 それでは要介護状態にあると認定された後、具体的にどのようなサービスをどのく らいの頻度で利用できるようになるのでしょうか?前回のこの欄で予想されるサービ スの項目を羅列してみましたが、これらが現実にどうようなサービス内容になるのか は明らかになっていません。介護保険制度のなかでもこの実際のサービス給付の段階 については未だに不明確な点が多くあり、筆者が調べた限りでは現在のところ提供さ れる介護サービスの具体像とその組み合わせは明らかになっていないようです。
 ただ、現在「介護支援専門員」と呼ばれる新しい国家資格ができており、この資格 をもつ人が要介護認定を受けた人に対して具体的なサービス計画(ケア・プラン)を 作り、このプランがきちんと実施されていくよう管理(ケア・マネージメント)を行 うとされています。専門員は・。年の9月から全国各地で資格試験が始まっており、 ケア・マネージメントのほかにも介護認定申請の代行や申請後の認定のための面接も 行えることになっていることから、2000年の制度運用開始のときには約4000 0人が必要になると見込まれています。
 次回は海外に住んでいらっしゃる方が日本に帰国した場合の保険申請について書い てみたいと思います。
 なお、介護保険制度は現在具体的なシステムの検討段階にあり、ここに書いた内容 はあくまでもこの原稿執筆時での情報をもとにしていることを書き添えておきます。

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「日本の社会福祉制度」介護保険(最終回)

 連載を一回休みましたが、今回は介護保険についての最終回です。来年4月に運用開始が予定されている介護保険について、とくに海外に暮らす方々への影響について述べてみます。なお、今回の記事の内容は筆者が住む市の老人福祉課に問い合わせた結果に基づいています。前回のこの項で述べたとおり、介護保険を実際に実施、運用する保険者となるのは各市区町村あるいはそれらが合同して運営する事業体です。この記事に書かれた海外居住者への取り扱いはすべての保険者が共通して適用する原則ですが、個別のケースについては住民登録をしているそれぞれの市区町村にお問い合わせください。

 介護保険制度が実施されると、被保険者の居住する各市区町村が「加齢に伴い」介護が必要となったと被保険者を認定(要介護認定)したときに、在宅または施設での介護サービスが受けられるようになります。そしてこれは「保険制度」ですから、要介護認定を受けて介護サービスを受けるためには当然保険料をあらかじめ支払っておく必要があるわけです。前々回の連載のなかでも述べましたが、保険料は65歳以上の方の場合、2000年度で全国平均月額2500円程度と見込まれています。40歳以上65歳以下の方の場合は、医療保険に加入している人が対象となり、保険料は加入している医療保険の算定方法に基づいて設定され、医療保険料と一括して支払うことになります。しかしこれはあくまでも平均であり、実際の保険料は居住する市区町村によって違いますし、被保険者の年齢によっても上下することになります。また、最近の新聞報道によれば保険料はこの予想額よりも高くなるという予測もされています。

 海外に居住されている方の場合はどうなるのでしょう?まず保険料の支払いについてですが、結論からいうとあなたが日本国内に住民登録をしていて、なおかつ日本の医療保険制度に加入している40歳以上のかたであ

る場合のみ保険料を支払うことになります。つまり、現在日本国内のどこかに住民票があり、日本の企業で働いていて日本の健康保険によってカバーされているか、あるいは日本で国民健康保険制度に加入している方は保険料を支払う必要があるわけです。配偶者の方も同様です。そのほかの方の場合は介護保険料の請求のみがされることはありません。例えば日本企業で働いていて、日本の医療保険に加入されている方は、今までの医療保険料に加えて介護保険料が請求され、毎月の給与から天引きされます。しかし、こういった医療保険に加入されておらず、日本で住民登録をされていなければ、介護保険料は支払わないということになります。ただし、日本で老齢・退職年金を受けている方で、日本で住民登録をしていて、なおかつ日本の医療保険制度に加入している場合はこれらの年金から介護保険料が天引きされます。

 次に介護サービス給付開始の認定についてですが、各被保険者が要支援あるいは要介護状態にあると思われるときは、まず居住している市区町村(保険者)に「認定申請」を行います。そして被保険者が要介護状態にあるのかどうかを保険者が審査し、その審査をパスすれば、つまり「要介護認定」を受ければ介護サービスの給付が開始されます。要介護認定の申請受け付けは今年の10月から住民登録されている市区町村の担当部署で始まり、介護サービス提供と保険料の支払いは2000年の4月から始まる予定です。現在海外にいらっしゃる方の場合、要介護認定を申請するには、審査を受けるために日本に帰国する必要があります。審査は保険者が派遣する調査員からの面接を受けなければならないからです。また、認定を受けた後の実際の給付も、指定事業者からの介護サービスという「現物」の形で行われ、現金給付はありませんので、この介護保険によるサービスを受けるためには物理的に日本に居住しているしかないわけです。

 では、いま現在オーストラリアに住んでいらっしゃる方が日本に帰国され、いずれかの市区町村に要介護認定の申請をしたらどうでしょう?こうした場合、その方が申請を出す市区町村に住民登録をし、介護保険に加入すれば、それ以外の申請と同様に審査されます。そして、これは申請が帰国の直後であったり、それまでオーストラリアに居住しているあいだ保険料を支払っていなかったとしても同じです。筆者が話した市の担当者によれば、こうしたケースは現在実施されている国民健康保険制度に準じて取り扱うことになるといいます。つまり、保険料支払いの期間の長短にかかわらず、介護保険に加入している限り、要介護認定を受ければサービス給付を受けることができるというわけです。この原則は申請を出す市区町村に関係なく、一律に適用されます。

 なお、介護保険制度は現在具体的なシステムの検討段階にあり、ここに書いた内容はあくまでもこの原稿執筆時での情報をもとにしていることを書き添えておきす。

Hope Connection 顧問ソーシャルワーカー 水藤昌彦)

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日本の社会福祉制度 社会福祉構造改革 「措置から利用へ」 (前編)

 今年(1999年)の4月15日に厚生省は「社会福祉事業法等一部改正法案大綱」(あまりに長いので以下、改正法案とします。)という文書を発表しました。なんだかやたらに漢字ばかりが並んだこの文書の内容は、第二次大戦後から今までのあいだ大きな変化に乏しかった日本の社会福祉政策の構造を根底から転換させようとするものです。これまで本稿では主に日本の福祉制度の内容について解説してきましたが、今号と次号の二回に渡っては、これら制度の拠り所となる福祉政策の大転換について書いてみることにします。

 第二次大戦後から現在にいたるまで、日本の社会福祉政策の基本的考え方は「失業している、年をとった、障害を負ったなどの理由で困窮した状態にある人を救済する」という考えを基本にしています。「何らかの理由で困っている」と認められる状態にある人に限って必要な金、もの、介護力などの「援助」を与えるという考え方です。このため従来日本では福祉制度を利用する場合「措置する」という言い方をしてきました。これは困っている状態にあると認められた人に、その困った状態から脱却せさせるために必要な援助を与えるよう「措置」するからこう呼ぶわけです。

 では、あるひとが困っている状態にあるのかどうかを決める、つまり「措置をする」のはどこかといえば、これは地方自治体をはじめとする行政機関、いわゆる「行政」です。「行政」が「困っているな」と認めた人に限って必要とされる福祉制度を利用できるようにしたり、必要な金やものの援助が与えられるように「措置する」というこのやりかたを「措置制度」といいます。

 「措置制度」では「誰が」「どういった内容の援助を」「いつ」「どこで」「どれだけ」受けるのかということは、すべて行政によって決定されます。もちろんどのよう援助がどれだけ必要なのかを当事者が行政に訴える(申請する)ことはできますが、その援助を実際に受けることができるかどうかを決定するのは行政です。援助を必要とする側とそれを提供する側が直接交渉を行ない、その援助を受けることが可能かどうか、また受けるとしたら何をどれだけの頻度で受けるのかを話し合うなどということは「措置制度」のもとでは想定されていません。もしもそういった直接交渉を行い、欲しい援助(この場合は福祉サービスと呼べるかもしれません)を自分で選びたい場合には、措置制度の外で個人的にその福祉サービスを自費で「買う」こととされてきました。そして、これは皆さんが髪を切りたいときに美容師さんのもとに行くのと同じように、欲しいサービスを得るために個人が独自に判断してやっていることであって、国としての福祉制度の中ではあくまで「付けたし」のようなものと見られてきたのです。そのために費用も全額個人負担となってきました。

 つまり個人が必要としている援助はあくまで行政から措置された結果として提供されるのが日本の福祉制度の基本であって、現在オーストラリアで一般化しているような「必要なサービスを利用者が選択して受け取るという」考え方とは大きく異なるものでした。ところがここにきてこの制度を根本から変えようとする動きが出てきています。個人にとってどんな「援助」が必要なのかを行政が判断してきた今までのような「措置制度」から自分にとってどんな「福祉サービス」が必要なのかを自らが決定して利用する「利用制度」への構造改革です。これが今回いちばん最初に書いた「改正法案」の基本となる考え方です。

 前回までのこの項でとりあげてきた「介護保険制度」は、この「利用制度」を老人福祉の分野に導入したもので、構造改革の考え方が実際の福祉制度に反映される最初のものとなります。介護保険制度のもとで、あるレベルの介護が必要だという認定を受けた人は、実際の介護サービスを指定業者の中から選んで受けることになります。この制度でも誰が、どれだけのサービスを受けられるのかは保険者である地方自治体が最終的には決定しますが、これまでの措置制度とは違って「どの施設から」サービスを受けるのかということが選択できるようになります。今までは措置される対象であった利用者が、主体的にサービス利用を選択する消費者へと変化するわけです。利用者は実際に自分でお金を払って欲しいサービスを買う代わりに、自分が加入している保険制度を使ってそれを買うというかたちになります。そしてこの介護保険方式を使った「利用制度」は、ごく近いうちに障害者福祉の分野にも導入されるといわれていて、現場では具体的な導入年度についてもとりざたされています。

 この構造改革は利用者だけでなく、いままで措置制度のもとで発達してきた日本の社会福祉施設にも大きな影響を与えています。なにしろそれまで措置されてくる「利用者」だった対象者が、自己決定権をもった「お客様」になるのですから、天と地がひっくり返ったような大変化なのです。そして、これは同時に経営的な転換も意味しています。これまで生産性も効率も関係なく、毎年決まった額の「措置費」とよばれる予算を消化していれば安泰だったものから、「お客様」のニーズに即したサービスを提供し、売り上げを伸ばして損益の分岐点を超えないことには倒産もありえるという競争状態への移行です。社会福祉構造改革とは、日本の社会福祉史上初めての「市場原理」の導入なのです。

 次回はこの構造改革によって起こっている具体的変化について書いてみます。

(ソーシャルワーカー 水藤 昌彦)

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オーストラリアの高齢者ケア制度の現状

 当記事は、Ballarat Health Services, Queen Elizabeth Centre のプログラム マ ネージャーの洋子マーフィーさんからご寄稿いただきました。

 オーストラリアは若い国で、高齢化率は現在12%で、2025年までには16% に上昇すると言われている。日本と比較するとその上昇率は緩慢で、現在日本の高齢 化率が16%、2025年までには30%に達すると予測されている。
 オーストラリアの医療保険制度は所得の1.5%を自動的に天引きするメディケア と呼ばれる国民皆保険制度をとっている。この保険制度は公立病院で治療費をすべて カバーし、一切の個人負担はない。私立病院で診療を受けたい場合は民間保険に加入 する。しかし保険加入者でも、治療費の全額はカバーされないので、民間保険加入率 が毎年減少し、公立病院の需要が高まり、手術待機者が増加する等、連邦政府はその 対策に苦慮している。
 オーストラリアでは、多世代家族が同居して暮らす習慣がなく、独居高齢者が多 い。65-79歳人口の3割近く、80歳以上では半数近い高齢者が一人暮らしであ る。そのためにすべての面で自立性が重要視されている。高齢者のうち、約7%が長 期老人施設に入所し、約15%が何らかの在宅サポートサービスを受けて自宅で暮ら している。在宅サービスの利用者の半数以上は独居高齢者で、うち7割が女性、80 歳以上の女性だけで全体の3割を占めている。サービスの種類は給食、ホームヘル プ、訪問看護、ホスピス看護、家屋修理、ショートステイ等で、年金者は安価でこれ らのサービスを受けることが出来る。その他複雑な問題を抱えている場合は、ケース マネージメントを適用したきめ細かい在宅ケアパッケージがある。
 長期施設ケアの場合、高齢者ケアアセスメントチーム(Aged Care Assessment Service - ACAS)が入所に関するアセスメントをし、適応性を判定する。ACAS のア セスメントは自宅または病院や老人施設等で行われる。老人施設には3種類あり、公 立(入所時にACAS の判定が必要)、私立(ACAS の判定が必要)、特別私立 (Exempt Nursing Homes - ACASの判定は不要)で、特別私立以外は入所費は同じよ うに計算される。長期老人施設としてナーシングホーム(重要介護 - High Dependency Level)とホステル(低要介護 - Low Dependency Level)があり、要介 護を8段階に分け、統一したアセスメント方式が使用され、入所後約3週間かけて看 護職員が看護ケアアセスメントをする。その結果、入所者がクラス分けされ、ケアプ ランが作成され、政府からの援助資金が決められる。
 オーストラリア政府は70歳以上の人口1000人に対し、100床の割合で、長 期高齢者ケア施設の整備計画を進めている、施設別ではナーシングホームが40床、 ホステルが50床、在宅ケアが10人の割合である。
 オーストラリアの高齢者ケア制度は全てがアセスメントを土台とし、それによって 各個人のニーズを明確化し、ニーズに応じたサービスを必要なときに必要なだけ提供 することで、利用者の財政状態にあった個人負担が課される。そのアセスメントも全 ての専門家がその分野のアセスメントをし、お互いの連携を保ちながら情報の交換が スムーズにいくように努力している。高齢化に伴う医療費の上昇に対処するために、 政府は経費の効率化を提唱し、予算の削減を実施しているので、それに伴う不平不満 が職員から出ている。一般的にオーストラリア人は意見をよく言い、討論や抗議をよ くするので、次期選挙に影響があるようにプレッシャーをかけて政府を見張る国民で あるから、ヘルスケアの分野は政府にとって常に頭痛の種である。

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日本の社会福祉制度 社会福祉構造改革「措置から利用へ」(後編)

前回(12号)のこの欄では社会福祉構造改革の基本的な考え方について書きましたが、今回はそれを受ける形でとくに老人介護の分野を例にとって、この改革によって何が起こっているのか、また何が起こると予想されるのかについて書いてみます。

 

 まず第一にはサービスという考え方の福祉分野への導入です。長年にわたって日本の福祉の現場では、一部の献身的なひとたちが集まって「面倒をみてあげる」といったような雰囲気の中で利用者へのケアが行われていました。いまから15年ほど前、私が高校生の頃にボランティアでちょっとのぞいたことのある老人ホームなどでも入居者に「料金と引き替えにサービス」を提供しているというような意識はなかったようですし、職員の発言を聞いていても老人を「お世話する」といったような意識が強かったように思います。こういった考え方はいまでも根強く残っていて、「福祉というのは奉仕の精神が大切だから」といったような発言をする社会福祉法人の関係者は大勢います。こういった日本の福祉の現場に従来から根強く存在する「老人をお世話する」という考え方、価値観の世界のなかに、「利用料金に見合ったサービスとしての介護」というまったく新しい考え方が構造改革によってもたらされたのです。

 余談になりますが「お世話する」と「サービスを提供する」、これら二つの言葉は似ているように聞こえるのですが、現場の職員のなかでは二つの表現が持つ語感は大きく異なるようです。お世話する、面倒を見るというのは、いわゆるウェットな感じ、言い換えれば情に訴えるような部分があるのですが、それが「サービス提供」になるとなんだかビジネスライクで冷たい感じがするという職員は多くいます。そう主張する職員の多くは自分たち生身の人間をケアしているのであって、物を作っているわけではないとも言います。

 

 第二には提供されるケアの質を問うという考え方がでてきたことです。ケアをお金で「買う」からにはその品質はきちんとしたものでないと困るというわけです。いままでの福祉の現場ではサービス内容の評価を公正に行うといった考え方はあまり一般的ではありませんでした。利用者も「お世話になっている」といったような、どちらかといえば受身な考え方をしたかたが多かったですし、ケアをする側も自分たちがお金の見返りにその介護をしているという意識は希薄だったのですから、そこで行われている仕事の質について問題にされることはあまりなかったのです。このため一部の老人ホームなどでは虐待がありましたし、そういった被害にあった人たちが相談する窓口も限られていたのです。構造改革では苦情処理のための第三者機関を設置することが義務付けられていますので、サービスの質の保証という面では一歩前進したのではないでしょうか。もちろん実効性についてはこれから注意深く見守っていく必要がありますが。

 

 第三には他業種からの福祉分野への参入とそれによる競争状態の発生があります。いままで福祉といえば地方自治体のような公的な機関か社会福祉法人と呼ばれる非営利の団体がその企画や運営を行ってきました。そこでは法人間の競争などというものは存在せず、

効率のよくない施設運営もあちこちで行われてきたのです。よくいわれることですが、従来の福祉業界には市場原理や競争原理という考え方は存在していませんでした。競争的な考え方は福祉というものにはなじまないとされ、このため民間企業の福祉分野での活動も制限されてきたのです。それが介護保険制度の導入を機に民間企業の参入が可能になったことで、一気に競争が始まりました。介護保険制度のもとではどの業者から介護サービスを買ってもよいわけですから、みな顧客の獲得競争に必死になるわけです。そして競争が始まればおのずと第二点で挙げられたサービスの質も向上していくと厚生省では見込んでいるようです。現場で見ていると確かにそういった利点もあるのですが、同時にこれは問題点もかかえています。一例をあげれば、過当な競争によってケアの質よりも経営の手腕が優れた事業者ばかりが生き残るのではないか、あるいは経営効率よりも質の高いケアを維持することを優先する施設の経営状況が悪化していき、結局利益率だけを追求する事業者が生き残っていくのではないかといったことです。ただし、介護保険導入と同時に新規に参入した某大手事業者のように、全国に介護ステーションを展開して大規模な宣伝活動を行っても、それぞれの地域にきちんと浸透できていなかったために実際の利用者獲得には結びつかなかった例もありますので、これら新規参入の事業者がどこまで伸びていくのかについては未知だと思います。実際には経営効率とケアの質の維持のふたつをどう折り合いをつけていくのか、そのバランスを見極めていく試行錯誤がこれから続いていくのではないでしょうか。

(ソーシャルワーカー 水藤 昌彦)

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カルチャーショックってなあに? (1)

精神科医・ホープコネクション顧問  南川 節子

  オーストラリアに来てどのくらいですか?住みごごちはいかがですか?カル チャー ショックを感じていませんか?
「今日ね、シティに出かけたんですけど、街の真ん中を裸足で歩いている人を見たん です。最初は変な人がいるもんだと思ったんですけど、ひとりじゃないんです。あち こちにいて、びっくりするやら、あきれるやら。」
「緊急の用件で取引先に電話したところ、担当の人が休暇を取っているからその件に 関して今はわからないというんです。代理に人を出してくれといっても、彼が来週 帰ってくるからその時に電話してくれというばかり。日本じゃ考えられないことです よね。どうなってんだかこの国は。」
 生まれ育った国を離れて異国の地で生活を始めると、様々な”違い”に出会うこと になります。言葉はもちろんのこと、気候の違い、生活習慣の違い、人付き合いの在 り方の違い、社会制度の違い、などなど数え上げればきりがありません。理屈では違 いがあることは当たり前だと思っていても、日本では常識であったことが通用しない となると、気持ちが動揺し、途方にくれてしまうものです。移り住んだ土地の生活に なれて、とまどったり驚いたり途方にくれたりする事が少なくなってくるまでのしば らくの間は、誰でも心身ともに不安定になるものです。この時期現れてくる精神的あ るいは身体的な症状を総称してカルチャーショックといいます。
 では具体的にどんな症状が出るのでしょうか。

◆自分にとってなじみが無く新しい物事に出会ったときのとまどいと緊張感や、どう したらいいかわからない不安をしばしば感じる。
◆日本でなら簡単にできていたことが簡単でなくなってしまうために、自分がつまら ない、能力のない者であるかのように感じて、不能感、劣等感や無力感を感じる。
◆いらいら、焦り
◆コミュニケーションがうまくいかないために孤立しやすく、周囲から拒絶されてい るように感じる。
◆孤独感、ホームシック
◆眠れない、眠りが浅い。
◆食欲がない。
◆下痢や便秘
◆持病の悪化
  普通、こういった症状は一過性のもので、新しい生活に慣れるにしたがって、数 週 間から数カ月で消えていきます。カルチャーショックは、生まれ育った文化から他の 文化に移り住んだ人誰にでも起こりうる一時的な反応なのです。カルチャーショック をうまく乗り切る方法については、次回に譲りたいと思いますが、今この問題で困っ ておられる方に一言。慣れるまでの辛抱です。でももし、何カ月も同じような状態で 悩んでいるとか、自分だけの力ではどうしようもないと感じるとかいったことがあれ ば、専門家の援助を求められることをお勧めします。ホープコネクションの電話相談 もご利用下さい。

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海外赴任者の不安神経症とメンタルケア

<編集部注>
この欄は「海外医療」九月号特集記事「海外赴任と成人病」の中の「ノイローゼ(神 経症)とうつ病」(津久井要医師)の一部を、発行元の許可の元に抜粋、編集しまし た。
<不安神経症とは?>
 不安神経症は最もしばしば見られる神経症で、成人人口の2~3%の頻度ともいわ れています。これには、不安発作と全般性不安状態があります。
 不安発作とは、理由もなく突然不安におそわれるもので、その際には身体症状が伴 います。身体症状としては、呼吸困難・動機・胸部圧迫感・窒息感・めまい感・手足 のしびれ感・発汗・気が遠くなる感じ、などがみられます。
 全般性不安状態では、不安発作がおさまった後でも慢性不安状態の形で不安は存続 します。このため、「また不安発作がくるのではないか!?」という予期不安を伴う ことが少なくありません。このため、一人で外出したりすることに制限が加わってし まう場合もみられます。
 不安神経症では、薬物治療が著効を呈することが多いので、担当医の指示に従い しっかりと服薬することが重要です。また状態が良くなり服薬をやめる際も、一度に 全部やめてしまうと、再び発作におそわれることがあるため、徐々に一週間ごとの ペースで漸減してゆくことが必要です。また、不安発作が生じやすい条件としては、 その頭文字を取って「HALTの状況」になっていないかどうか、自ら検討することも大 切です。HALTとは、Hungry(空腹)、Angry(怒り)、Lonely(孤独)、Tired(疲 労)を意味し、このような状況下で人は不安状態に陥りやすいとされます。朝食や昼 食を抜いたり、職場で激しく口論したり、海外で強い孤独感を感じていたり、ひどく 疲れているときは、不安神経症に陥りやすいので注意が必要です。もし自らの状況を 点検してHALTがあるようであれば、これを減じるようにライフスタイルを改善するこ とが必要です。
 他に恐怖神経症、強迫神経症、抑うつ神経症などが神経症の種類として挙げられま す。また海外勤務を契機として不適応状態からうつ病に陥るケースもあります。

<予防対策>
 海外赴任者がこのような病態に至る大きな要因には、環境変化にせよ対人葛藤にせ よ、種種の状況因により「心理的疲労」をきたすことがあげられます。人は心理的疲 労状態に陥ると、現実生活を送るための適応能力が低下し、不安症状や抑うつ症状が 出現します。そして、これら病的不安に対し、抑圧・逃避・反動形成・置き換えと いった心理的防衛機制が作用しますが、心理的疲労状態では、これらの諸機能がうま く奏功せず、結果として種々の神経症症状を生じることになると考えられています。
 すなわち海外勤務においてこれらの疾患を予防するという視点からは、心理的疲労 状態に陥らないことが肝要といえます。そのために注意点としては以下のものがあげ られます。1)対人関係や環境変化などでストレスが生じた際には、できる範囲内で 問題解決に積極的にアプローチし、消極的・逃避的な対処をしないこと。また、周囲 に仲間を十分に確保し、語り合ったりスポーツをしたりして積極的に気分転換を図る ことも重要です。2)楽観的姿勢を保持すること。海外では予測不可能な事態が多 く、自分一人で深刻に問題を抱えすぎるという悪循環に陥る危険性があります。無責 任というのではありませんが、「どうにかなるさ!」と考え、鷹揚に構える姿勢も海 外では必要です。3)生活や仕事に充実感を得られるように工夫すること。充実感の ない精神に空虚な状態というのは想像以上に精神的に消耗する側面があります。何ら かの着眼点を見つけ、より充実した楽しい日々を送ることが大切です。4)仕事の量 を適制限内に押さえ、職場での人間関係を良いものにする。特に職場内の人間関係は 重要です。いかに工夫しても職場内人間関係が改善しない時は、その状況から心理的 ・u梛覧」を取る必要が生じる場合もあります。
 最後に、神経症やうつ病を有しながら海外赴任に赴く場合は、しっかりと服薬し、 日本の担当医とも万一の時に連絡を取れるようにしておくこと、そして現地で信頼で きる医療機関を確保することが必要です。症状が増悪する場合には、速やかに帰国す ることが原則となります。過去に精神科治療歴を有する人の海外渡航は慎重を要する といえます。

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 予防接種あれこれ

 ホープコネクション顧問 精神科医 南川 節子

 先ごろ、メルボルン在住のKさんから破傷風予防接種についての体験記をお寄せいただきました.わたくし自身も子供の予防接種のことで困った経験もあり、オーストラリアと日本の違いなどを中心に予防接種の話題を取り上げたいと思います.まずは、Kさんの体験記から.

 オーストラリアに移住して9年目に入り、もうそろそろ破傷風の予防注射をしたほうがいいかなあと思っていた矢先、主人から電話.「会社で指切ってさあ、大したことないんだけれど、係の人に Medical Centre に連れて行かれて、破傷風の予防注射もただで打ってもらっちゃった.」とのこと.私の頭の中には、「あら、大丈夫かしら.」と「抜け駆けはずるい.」の二つのことが一度に浮かびました.結局、わたしもそこでアポイントをとり、Medicare Card をもっているので、ただで予防接種を受けることができました.その後何ヵ月かが過ぎ、仕事の関係上、日本からの留学生がキャンプに行くため、破傷風の予防接種に連れて行くことになったのですが、日にちがなく、Council Health Service の Immunisation Program では、一週間に一回のため間に合いません.GPの先生に連絡をとり、そこでは注射液をもっていたので、15ドルで受けられました.(注射液は用意してあるGPと、薬局に買いに行かなくてはならない場合とがある.)また留学生ですので支払った15ドルも健康保険である程度カバーされるとのことでした.(メルボルン在9年主婦より)” この体験記からいくつかのポイントを拾い上げてご説明してみましょう.

 1)予防接種はどこで受けられるのか? かかりつけのGPのある方は、そこに行くのが一番簡単でしょう.しかし、Kさんの場合のようにBulk Billing のGPでしかも接種薬を備えているところ以外では、診察料及び薬剤料がかかります.次の選択肢は、Council Health Service の Immunisation Program を利用することです.これは、各々の地域の Council が定期的に、Community Centre などで集団接種をおこなっているもので、無料です.Medicare を持っていない方でも利用できます.Council 発行の Community Directory/Guide 等でお住まいの地域の Health Service の電話番号を調べて、日時・場所などをお尋ねください.就学児童・生徒については、日本と同じく、学校で集団接種が行われますのでそれを利用されることをお勧めします.就学前の乳幼児については Maternal and Child Health Service を通じて接種が受けられます.

 2)破傷風の予防接種は大人にも必要か?

破傷風(Tetanus) の予防接種は三種混合ワクチン(DTP: 日本では DPT と言います)のなかに含まれていて、殆どの子供が接種を受けていますが、最終接種後、約5~10年経つと免疫が失われると考えられています.日本では、小学校6年生で最終接種を受けますので、二十歳を過ぎるころになれば、追加接種が必要になります.これをしなかった場合、破傷風に感染する危険性が出て来ますので、Kさんのご主人のように怪我をしたときに破傷風トキソイド(予防接種)をうってもらう必要があります.破傷風は、気にも止めなかったような小さな傷から感染することもありますので、Kさんのように定期的に予防接種を受けられることをお勧めします.

 3)どんな予防接種を受ければよいか?

オーストラリアで一般に行われている予防接種は、日本と殆ど変わりませんが、接種の時期や組み合わせが多少違っていますので、それらを比べながらみてみましょう.次に挙げるのは、オーストラリアでの Immunisation Schedule です.

年齢 種類         対象疾患

 2ヵ月    DTP(三種混合)  ジフテリア(Diphteria)、 破傷風(Tetanus)、百日咳 (Whooping Cough)

Sabin(経口投与) ポリオ(Poliomyelitis)

Hib B型インフルエンザ菌感染症 

 4ヵ月    DTP(三種混合)   ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与)  ポリオ

Hib B型インフルエンザ菌感染症 

 6ヵ月    DTP(三種混合)  ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与)  ポリオ

Hib B型インフルエンザ菌感染症 

 12 ヵ月   MMR(新三種混合)   麻しん(はしか;Measles)、 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ;Mumps)、                      風疹(三日はしか;Measles)

 18ヵ月 DTP(三種混合)  ジフテリア、破傷風、百日咳

Hib B型インフルエンザ菌感染症 

 5歳     DTP(三種混合)  ジフテリア、破傷風、百日咳

Sabin(経口投与 )  ポリオ

 11-12歳 MMR(新三種混合)  麻しん、流行性耳下腺炎、風疹

 15-19歳で ADT(Adult Diphtheria and Tetanus :成人用ジフテリア・破傷風ワクチン)と ポリオワクチンを接種

日本との大きな違いは

*日本では5歳でのDTPの接種はなく、代わりに小学校6年生でDT(ジフテリアと破傷風の二種混合)を接種します.

*日本では現在 MMR は行われておらず、各々単独で接種.流行性耳下腺炎は任意接種.オーストラリアでは個別の接種剤は使用されていないので、三疾患のうちどれか1つのみの予防接種を希望する場合でもMMR を使用することになります.

Hib は日本では一般には接種されていませんが、B型インフルエンザ菌は、乳幼児の肺炎・髄膜炎等を引き起こす細菌.(インフルエンザの原因であるインフルエンザウィルスとは別ものです.)

*ツベルクリン反応、BCGといった結核の予防接種は、オーストラリアではされていません.

*オーストラリアでは上の表にあるように数種類の予防接種を組み合わせて同時に接種します.わたくしの子供の例ですが、Council の Immunisation Program にMMR を接種しに行ったところ、「この子は Prep だからもうすぐ学校で DTP と Sabin の接種を受けることになるが、いま MMR をするとこのあと一月は Sabin は受けられなくなる.面倒だから今日全部やってしまってはどう?」と勧められました.全部で7つの病気の予防接種をいちどにやっていいのかしらと今までに経験のない発想にびっくり仰天しながらも、それをあたりまえのように気軽に勧める Community Nurse と Dctor の経験を信じて接種を受けさせました.そして、DTPの注射部分が少し腫れたくらいで特に問題なくすんでしまいました.数種類の予防接種を組み合わせて同時に接種した場合、免疫のでき方が悪くなるのではないかという議論が日本でもなされていましたが、MMR についての研究の結果、悪影響はないと考えられるようになっています.同時接種をするかどうかは、かなり慣習によって左右されているのではないでしょうか.とはいっても、不安や疑問があれば、十分に doctor に相談されることが大切なのは言うまでもありません.

 Hope Connection では、Immunisation Program で予防接種を受ける場合に手渡される説明書の日本語訳を用意しました.これには、上記の Immunisation Schedule の他、接種を受けては行けない人の条件や副反応についての説明などが書かれています.ご希望の方は、返信用封筒を同封の上、お手紙でお知らせください.

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Melbourne Sexual Health Centre のご紹介

HOPE CONNECTION 顧問 精神科医 南川 節子

 私たちの日本語電話相談に,これまでに何件か AIDS ( Acqired Immune Deficiency Syndrome: エイズ ) や性病など、性についてのご相談がありました。内 容は様々ですが、共通していたのは、多くの人に生じうることであるのになかなか口 に出しにくく、しかもできるだけ早い対応が望まれる切実な問題だということでし た。そこで今回は、AIDS を含めた性行為感染症に関する相談・検査・治療を匿名で しかも無料で受けられる Melbourne Sexual Health Centre のご紹介をしたいと思 います。
 性行為感染症( 英語では Sexually Transmitted Diseases/Infections, STDsと略 されます ) は少々馴染みの薄い言葉かも知れません。これは,従来から「性病」と 言われていた淋病・梅毒・軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫に加えて、AIDS・性器ヘルペ ス感染症・非淋菌性尿道炎・B型肝炎などの、やはり性行為によって感染する細菌や ビールスなどによってひきおこされる病気を併せて言うものです。AIDSは、その致死 率の高さと治療の困難さのため注目を集めていますが、その他の治療が比較的容易な 性行為感染症でも世界中で感染者があとをたたず、日本やオーストラリアもその例外 ではありません。ハイリスクの性行為(不特定多数の相手との性行為、あるいは不特 定多数の相手との性行為を経験していると予想される相手との性行為、特にコンドー ムを使用しない場合など)を避けることが予防の手段ではありますが、人間の性と生 の複雑さを思えば、それで事足れりとするわけにはいきません。
もしもこれらの感染症にかかっているかもしれないという不安があるなら、できる だ け早くきちんと診察・検査を受け、必要ならば治療して後遺症を防ぎ、また自分自身 が感染源にならないことが責任ある態度といえます。しかし、こういったことはなか なかオープンに誰にでも相談できるものではないでしょうし、GPに相談するにも決心 がいるという方もあるでしょう。
Carltonにある Melbourne Sexual Health Centre では年齢・性別・メディケアの 有 無などに関係なく、性行為感染症に罹っている人或いはその心配がある人の相談を受 け付けています.専門医・看護婦・カウンセラー・臨床検査師・薬剤師といったス タッフをそろえ、相談・診察・検査から治療・投薬に至るまでが無料で受けられま す.相談に訪れる人のプライバシーへの配慮から,身分証明の提示を求められること はありません.メディケアカードもGPからの紹介状も不要ですので、ともかく電話で 予約を入れてください.予約なしで行っても決して断られることはありませんが、い くらか待たなければならない場合もあるそうです.

住所・電話番号は
  580 Swanston Street, Carlton 3053
Phone: 9347 0244  Country Regions: 008 032017
Fax: 9347 6757

この記事についてのご質問あるいはご相談などありましたら、Hope Connection まで ご連絡下さい.
 電話: 017 874 824 ( 日本語電話相談 ) 
  郵便: c/o Migrant Resource Centre, 161 Fitzroy Street St. Kilda 3182

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オーストラリアでの出産

西村 文子(助産婦) 南川 節子(精神科医)

今回はオーストラリアで出産することを考えていらっしゃる方のための話題です。 妊 娠・出産には不安なことがいろいろとつきまとうものです。外国での出産となればな おのこと。的確な情報を得て、少しでも不安を減らしていただきたいものです。  出産についてよくあるお尋ねは、「出産するのに、どこの病院がいいでしょう。」 ということですが、これはなかなかお答えしにくい質問です。というのは、それぞれ の方がどんなお産を望んでいるか(自然な分娩?無痛分娩?とにかく安全な分娩?・ ・・)、どこに住んでいるか、費用はどの程度を予定しているかなどによってお勧め すべき施設が変わってくるからです。というより、どこかを「勧める」ということ自 体が適当ではないのかもしれません。あくまで、出産する方とその家族の「どんな出 産をしたいのか」という価値基準にあった選択こそが大事なのだともいえるからで す。そこで今回は、自分にあった施設を選ぶための基礎知識として、当地の出産施設 について一般的なお話しをしたいと思います。
 妊娠かなと思った時は、GPの診察を受けて妊娠の有無を確認してもらいます。ある いは薬局で市販している妊娠判定薬を使って自分で検査をすることもできます。GP で妊娠であることが確認されたら、どこで出産するのかを決めてGPの紹介状を持っ て受診し、それ以後の定期検診から出産、出産後の母子検診までをその施設で受ける ことになります。その際の選択肢と、それぞれの特徴を大まかにご説明しましょう。

1)病院の産科:オーストラリアの病院は公立(public hospital) と私立(private hospital) に別れています。Medicare の適用で公立病院で出産する場合、担当医師 を指定することはできませんし、病院が提供する形での出産になります。費用の個人 負担はなく、通常の入院期間は5日となっています。私立病院では医師を自分で指定 でき、入院期間も希望に応じてくれますが、費用は大体$4,000-5,000以上ほどかか ります。病室などの施設やその他のサーヴィスは、公立に比べると充実しています。 Medicare の適用外の方が、公立病院を Private 患者として利用する場合には、医師 を指定することができ、費用も私立病院に比べれば割安となるようです。施設やサー ヴィス内容は各病院によりかなり異なります。できればいくつかを見学してから選ん でみてはどうでしょうか。
2)Birthcentre:いくつかの公立病院に付属する形で設置されている Birthcentre では、助産婦(Midwife) が主体となって正常妊娠・分娩を扱い、私立病院に劣らな い整った施設・設備とゆったりとした家庭的な雰囲気の中での医療介入の少ない自然 な分娩が行われています。入院期間は短く、筆者の一人西村が Monash Birthcentre で出産したときには、出産後24時間で退院でした。このように早い時期での退院に対 応するために、地域の Royal District Nurse が最初の一週間に3回、自宅を訪問し ます。母親の血圧測定・乳房や傷の具合の観察、出生児の体重測定や反射の検査など を行い、授乳・育児・産後の生活指導をしてくれます。また、自宅の最寄りの Maternity Child Health Centre の助産婦の自宅訪問も受けられます。メルボルンで は、Royal Wemen's Hospital, Monash Medical Centre, Mercy Hospital for Women 等にあり、Medicare が使えますし、その対象外の方でも費用負担は数100ドル程度の ようです。また、緊急事態が起きた場合や、異常妊娠であることが分かったときなど すぐに病院からぁw)дサポートが受けられるという利点もあります≫・・#010; 3)産科専門のGPクリニック/産科専門医:Yellow Pages のMedical Practitioner の項をみると、 Obstetrics/Gynecology、GP Obstetricsといった医師が見つかりま す。あるいは、妊娠を確認したGPに紹介してもらうこともできます。これらは、産 科・婦人科専門医とGPのなかでも産科を扱う医師で、妊娠から出産、産後まで一貫 して一人の医師にみてもらうことができる利点があります。その一方で、自分の望む 出産を提供してくれる医師を慎重に選ぶことが大切になります。出産はその医師の指 定する病院で行うのが一般的です。
4)自宅分娩:ごく少数ではありますが、自宅での分娩を扱っている登録助産婦もい ます。Yellow Pages の Childbirth Servives の項をみると、数件の Midwife への 連絡先がわかります。電話や書面で連絡を取ってみて下さい。費用は大体$1000 程 度でMedicare の適用はありません。正常妊娠・分娩のみを扱います。
 以上のようなことを参考にしていただいて、知り合いの経験談などの情報もしっか り集めた上で、いくつかの施設を見学してみられることをお勧めしたいと思います。 その際に、自分がどんな出産を望むのかをはっきりさせておくことが大切なのは言う までもありません。また、担当の医師や助産婦としっかり意見の交換をする事も大切 で、西村の経験でも、定期検診の時にただ医者の言うことを聞いていると、どうして いろいろと質問しないのかと不思議がられました。言葉の問題でうまくコミュニケー ションがとれないと思ったら、医師や助産婦に通訳を付けてもらうように頼んで下さ い。多くの場合、無料で通訳サーヴィスがうけられます。どこの施設でも母親学級の ようなものを開いていますので、積極的に参加しましょう。実用的な知識や出産にま つわる英語の語彙が得られるだけでなく、日本との違いに気付くことができるかもし れません。文化の違いや言葉の問題にめげず、積極的に自分にとっての「理想の出 産」を追求しましょう・・・というのは少し大袈裟でしょうか?

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カルチャースクール 「女性の健康問題」 紙上レポート

 去る11月20日,モナシュ大学大学院に留学中の産婦人科医師、大隈良譲先生にお越しいただき、女性の健康問題についてのセミナーを開催いたしました。「女性の健康問題」というたいへん幅広いトピックであったにもかかわらず、大隈先生は快く講師を引き受け下さり、子宮ガンから男女生み分け法まで、最新の情報をまじえながら素人にもわかりやすいお話をして下さいました。紙上を借りて深くお礼を申し上げたいと思います。

 さてここでは、紙面の都合上講演の全部をご紹介できず残念ですが、子宮がんについてのお話をレポートしたいと思います。

 すべての女性に関係するもっとも大きな健康問題のひとつは、女性性器のガン。その中でも子宮頚ガン(子宮の中でも膣に近い子宮頸部に出来るガン:cervical cancer )が80%を占めています。早期の子宮頚ガンには、ほかの臓器のガンもそうであるように、特別症状はありません。不正出血 ( abnormal uterine bleeding ) やおりもの ( vaginal dischrge ) の異常、痛みなどの症状が出るのは進行したガンです。ガン組織が子宮頸部の粘膜だけにとどまっている場合には、Cone 切除という子宮が膣に入り込んでいる部分のみを切り取る手術ですみます。この場合の5年生存率はほぼ100%です。ところが、これを越えてガンが拡がっていくと、子宮全体を手術で取り除いたり、化学療法や放射線療法を加えたりする必要が出てくる上、生存率もどんどん下がっていきます。

ほとんどの早期子宮頸がんは子宮ガン検診( Pap smear test )という簡単でかつ安全な方法で見つけることが出来ます。子宮ガン検診は、膣から子宮頸部を見て、綿棒で軽くこすってその部分の細胞を採取し、顕微鏡で細胞の形などに異常がないかをを調べるものです。定期的に子宮ガン検診を受ければ、子宮頸部の細胞がガンとはいえないまでも少し正常と違っているという段階で異常を発見することができ、子宮頸ガンで大きな手術を受けたり、命を落としたりする可能性をほとんど予防することができるわけです。

 日本では子宮ガン検診は毎年受けるように勧められていますが、オーストラリアでは検診で異常がなければ2年後に検査を受けるように指導されています。正常な組織がガンになる確率が、1年後よりも2年後の方がほんの少しでも多くなることを考えれば、やはり1年毎に検査を受けた方がよいのではないか、というのが大隈先生のご意見でした。

 もう一つの子宮ガンである子宮体ガン(endometrial cancer ) は子宮頸ガンに比べると高齢で少産の女性に多いといわれています。これもやはり早期に発見することが大事ですが、子宮頸ガンほど簡単な検診方法はまだありません。ただし、Pap smear test の際に子宮内膜の細胞の異常が見つかって、子宮体ガンの発見につながることもあります。そういった意味からも,簡単で安全で有効な子宮ガン検診を定期的に受けていただきたいと思います。子宮ガン検診はかかりつけの GP(一般開業医)のところで簡単に受けられます。

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ドラッグ問題 -カルチャースクール紙上レポート-

 去る8月21日(土)第10回ホープコネクション・カルチャースクールが開催されました。今回は頻繁にメディアでとりあげられている「ドラッグ問題」をテーマにTurning Point Alcohol & Drug Centre Inc.で教育・トレーニング部門を担当されておられるSandra Roegさんに講師をお願いし、ドラッグ問題の基礎的な知識、情報を提供していただきました。ドラッグといえばすぐに「麻薬」を連想しがちですが、ドラッグにはアルコール、タバコも含まれ、オーストラリアではそれぞれ年間100億ドル、40億ドルがその購入に使われているそうです。ヘロインなど売買が禁止されているドラッグの密売にも40億ドルが費やされているということですから、極めて簡単にこれらの麻薬が入手できることを示唆しています。

 中でもヘロインは、キャップといわれる数回分の分量を15~20ドルくらいの値段で買うことができ、若者への浸透が心配されています。しかし、麻薬常習者は広く社会に分布しており、社会階層や居住地域で特定することは難しく、「麻薬撲滅」自体を対策目標にすることは現実的でないと考える専門家が多いようです。従って、その害を最小限に押さえるHarm Minimisationという対策が85年より講じられ、過剰使用、及び注射針共有によって引き起こされる死亡事故、AIDSなどの感染防止などで成果を上げています。最近NSW政府が発表した安全なヘロイン注射、専門家によるカウンセリングなどのための公的施設の設置なども現実的対応のひとつとしてみることもできるでしょう。麻薬の中でも特にヘロインは常習すると外界の認知力が著しく低下し、眠気が続いたような状態を呈するそうです。また最悪の場合には死に至るという危険なものです。

 ドラッグ問題は年頃の子供を持つ親にとってはことさら心配の種でもあります。この点に関しては、Sandraさんはご自身の体験も踏まえ、子どもとの対話のパイプがあること、一方的に非難・批判するのではなく、いつもヘルプしたいのだという態度を見せていることが大切ではないかとおっしゃっておられました。ヘロイン常習者には、人がそばにいない場合は飲用・摂取を避けるようにアドバイスしているそうです。過剰摂取による死亡事故などを未然に防ぐためだそうです。また路上で倒れている人を見かけたら声をかける、携帯電話を持っていたら、救急車を呼ぶなどしてあげることも大切だとお話しされました。

 いずれにしてもドラッグ問題は犯罪とも結びつく深刻な社会問題です。オーストラリアの犯罪の80%はドラッグに絡むものだそうです。筆者がたまたまある地域の商店街を昼間歩いていたところ、それらしいものを若者が手渡しているのをごく最近見ています。参加者の方の質問にもありましたが、ドラッグが簡単に手にはいってしまう途をどこかで断ち切れないもでしょうか。

 日本人コミュニティーの中では実際ドラッグがどれだけ問題なのかどうかはほとんど分かっていません。存在していないのか、表面に出てこないだけなのか、いずれにしても私たちにとって、他所事とは思えない身近な問題であることを教えられたセミナーでした。なおドラッグ関係の相談は、24時間直通ライン 9416-1818 が受け付けてくれます。

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ドラッグ問題を考える(その1)-親子のコミュニケーション

Turning Point Alcohol & Drug Centre Inc. の Sandra Roeg さんにお話を伺いました> 

 親にとって子供のドラッグ使用は見るに耐えないことです。どの親も直ちにやめて欲しいと願うわけですが、さてどのようにしてやめさせることができるでしょうか。親にもサポートは必要です。ドラッグについての懸念や感情を友人、家族など誰かと話し合ってみてはどうでしょう。

 大麻は現在、違法物質の中では最も多く使用されているものです。親は、まず大麻が人にどんな影響を与えるか正しい情報を知る必要があります。もし子供が大麻を使用していることに気づいて、やめさせたいと思ったとき、子供に「大麻使用には賛成じゃないわ、あなたも大麻のことをもっと調べてみなさい。そうすればどんな影響があるのかがわかるでしょうから。」 と話すことができます。

 子供が大麻を使用している場合、注意する点がいくつかあげられます。頻度はどれくらいでしょうか。もしかすると一度試しただけかもしれません。それとも週末だけ、あるいは毎日でしょうか?子供は普段の行動、例えば学校生活や交友などを維持しているでしょうか?ドラッグ使用以外の生活活動を維持しているのであればさしたる問題ではないかもしれません。精神的、身体的な状態に変化が見られますか?親自身の状態はどうでしょう?ドラッグ問題以外に何らかのプレッシャーを抱えてはいませんか?家族からのサポートは得られますか?

 思春期の子供は変わりやすいものですが、その通常の変化をはるかに越える大きな変化が子供の素行に現われた場合は気を付けなくてはなりません。食生活、交友関係が大きく変わったり、極端に機嫌が悪かったり落ち込んでいたりする場合です。誰でも我が子がドラッグを使用しているとなれば胸が痛みます。ダメージにつながるような行動は何もして欲しくないと願うのが親の心でしょう。

 大麻はソフトドラッグとも言われヘロインに比べると軽いドラッグですが、人間の機能を低下させ、多量に摂取すればかなり気分が悪くなります。長期使用の影響や精神病との関係において未だに論争が続いているのが実情です。アルコール問題にも似ていると言えます。長期にわたって毎日6杯以上飲み続けたり、妊婦が毎日1本飲むとなれば問題が生じますが、週末に1-2杯なら問題にはなりません。しかしながら一方は合法、もう一方は違法であることを覚えておいてください。

 大麻はさらなるドラッグ使用への入門書だと言われますが、必ずしも真実ではないと言う説もあります。大麻使用者は大麻だけを摂取し、中にはアルコールを摂取する人もいますが、ヘロインなど他のドラッグに手を出さない人が多数です。大麻使用が発覚した場合に親と子の間で、どのような妥協策を講ずることができるでしょうか?親が子供の大麻摂取量を制限する必要があるかもしれませんし、「あなたがドラッグに影響されている姿を見たくないのよ。」と家の中では使用しないように頼むこともできます。

 親には戦略が必要です。できれば子供と一緒に作戦を考えてみてください。子供を叱れば自分から離れてしまうことを心配する親もいらっしゃると思います。親には何の力もないような気にさせられますが、常に子供を導く方法はあるのです。子供と良いコミュニケーションを保ち、ドラッグについて話し合うことが重要です。「ドラッグはいいことではないわね、私の子供達はドラッグに手を出して欲しくないわ。」アルコールって何?大麻は?ヘロインは?どうしてヘロインのことがこんなに話題になっているの?会話のきっかけをつくるために友達のことを話題にしてみましょう。友達でドラッグやってる子はいる?学業に影響してる?友達としてどう思う?もしその子がドラッグを使用してなかったらどうなってるかな?親が子供の行動に興味を持っていることを示してください。年頃の子供だけでなく、年少の子供も含めて家族全員で話し合いましょう。なぜならドラッグは常にニュースになっており、誰でもすぐ手の届くところにあるからです。私達はアルコールを飲み、煙草を吸います。18歳になればLの運転免許を取ることができますが、免許を取る前にアルコールの影響について親は指導しなくてはなりません。自分が知らないことは「わからないけれど、調べておくわ。」と答えればいいのです。

 ドラッグ問題全般についてはHarm minimisation、害を最低限にとどめる戦略がひとつの方法です。家庭内でドラッグの使用が発覚した場合に、家族への害をいかにして減らすかということです。お互いに妥協することとなるため、親にとっても子にとっても、満足行く結果とはならないかもしれません。簡単なことではありません。爆発することなく落ち着いて話し合うことが大事です。すべてを直ちに解決してくれる魔法の杖は存在しないのです。

 Turning Point では 24時間のDirect Lineというドラッグに関する電話相談および情報を提供しています。ご家族もDirect Lineのサービスを利用することができます。

Direct Line 03 9416 1818 日本語の通訳が必要な場合は、この電話番号におかけになり通訳を依頼して一旦受話器を置き、先方からの電話を待つ形になります。相談、通訳共に無料です。

 ドラッグに関するさまざまな情報、教育のためのビデオなどはAustralian Drug Foundationより入手できます。

電話: 03 9278 8100

メール: adf@adf.org.au

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ドラッグ問題を考える(続)- 事例研究:娘の暴力と麻薬